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大阪高等裁判所 昭和49年(ネ)999号 判決 1975年10月31日

控訴人

竹内久枝

右訴訟代理人

池上治

被控訴人

岩井康次

外三名

右四名訴訟代理人

小野正章

外三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、求める裁判

(一)  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人らは控訴人に対し、原判決別紙目録(二)記載の建物を収去して同目録(一)記載の土地を明渡し、昭和四五年四月一日から昭和四七年九月末日まで一ケ月六〇〇円の割合による、同年一〇月一日から右明渡ずみまで一ケ月三二〇〇円の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

(二)、被控訴人等

主文と同旨。

第二、当事者双方の陳述、証拠の関係<省略>

理由

原判決理由の冒頭から原判決五枚目表八行目までを引用する。

<証拠>によれば

(一)  本件賃貸借の目的たる原判決別紙目録記載(一)の土地は、財団法人住吉学園所有の土地であつて、控訴人の父亡松本市蔵が右学園から賃借していたのを、被控訴人等が右市蔵から賃借し、同地上に本件建物を建築して居住していたものであるが、右市蔵が昭和三一年八月頃死亡し、昭和四二年頃、右市蔵の子北川靖子が本件賃貸借の賃貸人の地位を承継し、被控訴人等もこれを認め、右北川靖子に対し賃料を支払つていたものであること、

(二)  ところが、昭和四五年三月末頃北川靖子の姉に当る控訴人の要求により北川靖子と控訴人間に右賃貸人の地位を北川靖子から控訴人に譲渡する話合いができたが、その後今日に至るまで、北川靖子から被控訴人等に対しては、右賃貸人の地位の譲渡について何らの通知もなされておらず、また、被控訴人等の承諾を得た事実もないこと、

(三)  控訴人は被控訴人等に対し、突然、前記認定のとおり賃料の催告をし、かつ、前記のとおり未払地代の不払を理由として本件賃貸借契約解除の意思表示をしたものであること、

が認められ、右認定を左右する証拠はない。

本件のように賃貸人が土地所有者でない土地の賃貸借契約では、賃貸人の地位の譲渡は、譲渡人がこれを賃借人に通知し、又は賃借人がこれを承諾しなければ、これをもつて賃借人に対抗し得ないと解するのが相当であるところ、前記のとおり右通知又は承諾はなされていないから、本件賃貸人の地位の譲渡は、賃借人たる被控訴人等に対抗することができず、控訴人は被控訴人等に対し本件賃貸借の賃貸人たることを主張をすることができないものといわなければならない。

よつて、その余の点について判断するまでもなく、本件賃料支払いの催告や賃貸借契約解除はいずれもその効力がなく、賃料の請求その他本訴請求はすべて理由がなく、失当としてこれを棄却すべきものであり、主文を同じくする原判決は結局正当で本件控訴はその理由がないから、これを棄却し、民訴法第九五条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。

(長瀬清澄 岡部重信 藤浦照生)

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